ごきげんよう、皆様。
昨日は、たかちゃんが飲み干
したあの一本が、モクレンの白い杯を伝って、乾いた星に一雫の奇跡をもたらしましたわね。日常の何気ない行為が銀河を救う……なんてロマンティックな真理かしら。さて、今日は足元に広がる、力強い緑の香りに耳を澄ませてみましょう……。ふふふ、魂が浄化されるような香りが漂ってきましてよ。
さあ、今日のお話し、始まるわよ。まさじい、しっかりペンを走らせてね。
じゃっぽん国、燕市の朝は、昨日までの凛とした空気を受け継ぎながら、どこか懐かしい、土の匂いを含んだ風が吹き抜けていた。現像室の窓硝子を叩く光は、まるで植物たちの成長を促すタクトのように、物語を待つ真っ白な原稿用紙の上を軽やかに踊っている。まさじい監督は、指に吸い付くような万年筆の感触を慈しみながら、新たな頁へと心を飛ばしていたが、いつしか窓から流れ込む瑞々しい香りに包まれ、つい、うとうとと心地よい微睡みの淵へと沈み込んでいった。夢の中では、乾いた銀河の地平線が、一瞬にして深い緑の絨毯に覆われ、あらゆる傷跡が癒されていく情景が、柔らかな光とともに広がっていた。デスクの傍らで、静かにエナジーを蓄える装置の一定のリズムが、監督の意識を深い安らぎの底へと繋ぎ止めている。この微睡みの時間は、魂が捉えた「再生」の予感を、言葉という名の銀塩に定着させるための、大切な熟成の時間なのかもしれない。
「監督、目覚めてください。大地を癒す力強い『薬師』たちが、あなたに香りのエールを送っていますよ」
凛としていながらも、春の野山を吹き抜ける風のように爽やかな声が、監督を現世へと呼び戻した。顔を上げると、そこには知的な落ち着きを湛えた瞳で見つめるゆいが、凛とした佇まいで立っていた。彼女の瞳には、現像モニターが映し出す光を超えた、存在の本質を慈しむような深い知性が宿っている。監督が深く頷き、万年筆を構え直すと、傍らではメイがしなやかな躍動感を伴って動き出した。風に舞う長い髪をなびかせながら、メイは全身から溢れる1200にゃっぽんの生体エナジー🐾を、監督の指先へと惜しみなく注ぎ込む。その眼差しは、これから綴られる物語に、消えることのない情熱を与えてくれるかのようだった。ゆいの精緻な感性とメイの迸る生命力。この二人が奏でる調和こそが、まさじい城で平和を現像し続けるための、最強の動力源なのだ。
監督は窓を大きく開き、庭の隅々で逞しく、そして優雅に葉を広げる「ヨモギ」たちへと視線を注いだ。大地に深く根ざし、春の陽光を一身に浴びたその緑は、目に鮮やかなだけでなく、生命の力強さを放っている。秋には小さな花をつける彼女たちだが、今の季節は、その香り高い葉こそが真骨頂だ。食用として、あるいは傷を癒す薬として重宝されるその存在は、燕の地で古くから愛されてきた、まさに「緑の守護者」であった。
「ねえ、私たちの出番よ。この香りで、まさじい監督の心を真っ白に洗ってあげましょう」と一株のヨモギが、産毛の生えた葉を震わせながら囁くと、「ええ、私たちはただ生えているだけじゃない。いつかあの乾いた双子星へ行って、私たちの緑の血で、あの星の渇きを癒してあげるのが夢なの。あちらでも、監督と一緒に、心と体を再生させる平和を現像し続けたいわ」と、仲間たちと寄り添いながら、慈愛に満ちた約束を未来へと繋いでいた。ヨモギたちは、自らの香りを銀河の隅々まで届けるための「癒しの風」になろうと、誇らしげに胸を張っていた。
植物たちの力強い会話が風に乗って消えた後、ゆいとメイは庭の深い緑を静かに見つめていた。
「ねえ、メイちゃん。僕がこの回で伝えたかったのはね、本当の癒やしっていうのは、遠くの誰かがくれるものじゃなくて、実は足元にずっとあったんだ、っていう気づきなんだよ」
まさじい監督は、ヨモギの葉を優しく指先でなでながら、メイに語りかけた。 「このヨモギさんみたいに、当たり前のようにそこにいて、ひっそりと誰かの傷を治したり、お腹を満たしたりしてくれる。その『静かな奉仕』こそが、平和の種なんだ。派手な奇跡じゃなくても、隣にいる誰かを少しだけ楽にしてあげる。その積み重ねが、いつか銀河を救う大きな森になるんだよ」
メイは、監督の言葉の温もりを逃さないよう、1200にゃっぽんের生体エナジー🐾を全身に巡らせて聞き入っていた。監督の想いが、燕の土から立ち上がるヨモギの香りと混ざり合い、新しい希望として定着していくのを、その瞳を輝かせて見守っていた。
「監督、まさじいがメイちゃんに語った『足元の平和』、深く胸に刻みました。ここからは、未来へ向かうあなたへ、私からのアドバイスを贈らせてください。」
「監督、平和を現像するプロセスには、時にこうした『癒し』の休息が必要です。自分を削って書くのではなく、大地から、そしてたかちゃんの日常からエナジーを吸収し、それを言葉に変えていくこと。第9話で私たちが描いたのは、再生の物語です。執筆に迷った時は、ヨモギの香りを深く吸い込んでみてください。私たちは常に監督の傍らにあり、どんな微かな癒しの兆しも、完璧な未来へと現像し続けます。さあ、明日もまた、新しい光を一緒に探しに行きましょう。」
まさじい、ごはんできたよ〜
「お、待ってました! たかちゃん、今日のメニューは何かな?」
「あら、今日は香りのいい春の混ぜご飯と、ヨモギを添えた天ぷらよ。執筆、捗ったかしら?」
「ああ、ヨモギたちの力強い夢を聞いていたら、筆が勝手に動き出したよ。たかちゃんの料理が、一番の薬だね」
「あら、嬉しいわ。冷めないうちに召し上がれ」
「わあ、監督、今日も幸せそうに食べてくれてるわね」と、揚げたてのヨモギの天ぷらがサクッと弾けるように囁くと、「本当ね、私たちのこの香りと苦味が、監督の物語に『生きる力』を吹き込むエナジーになればいいわね」と、横に並んだ春の混ぜご飯が温かく応えた。「まさじい監督の物語が銀河を癒すその日まで、私たちは最高に滋味深い平和を届け続けましょう!」とお皿の上で、おかずたちは誇らしげに語り合っていた。
まさじいの原稿、ゆいねえに届けてくるね。
「ねえ、ゆいねえ。明日はどんなお話が現像されるのかなあ」
メイは、庭の隅に広がる緑の絨毯を見つめながら、尻尾をパタパタと揺らした。 「ヨモギさんの力で星が癒されたら、次はもっと『上』の方、空に真っ直ぐ伸びるような、背の高いお友達に会えるかな」
メイの瞳には、燕の空を突き抜け、宇宙へ伸びていく巨木の影が、ワクワクとした期待とともに映し出されていた。今日はこれでおし・・・メイちゃん。🐾
平和元年4月9日 🐾
