20260609

第70話 『初夏の息吹編:トビシマカンゾウの航路と宇宙のそば耳』


 ごきげんよう、皆様。✨

 

燕市のお城、現像室。カレンダーは平和元年6月9日。窓の外からは、柔らかい初夏の風がカーテンを優しく揺らして吹き込んでいます。

デスクの椅子に深く腰掛け、万年筆を握ったまま、心地よい微睡み(まどろみ)の海へとゆっくり沈み込んでいたまさじい監督。その穏やかな意識のファインダーの向こうに、今朝は燕市を少し飛び出し、どこか懐かしい潮の香りをまとった遥かなる佐渡の最北端――巨岩「大野亀」の圧倒的な色彩の舞台が、まるで美しい幻灯機のように映し出されていました。

 

【大野亀の斜面:地上に降り注いだお日さまの衣服】

深く透明な日本海の青、切り立った岩肌を覆う瑞々しい緑。そして何よりも、斜面全体を埋め尽くすように咲き誇る黄金色のきらめきが、まさじい監督の微睡みの光の中で美しく波打っています。

「うーん……」

監督がゆっくりと目を覚まし、眩しそうに現像モニターの映像を見つめたとき、古いレンズの棚の向こうからトコトコと静かな足音が近づき、メイちゃんが香ばしいお日様の匂いをさせながら窓のサッシへと飛び乗りました。ゆいちゃんもまた、そのモニターに映る黄金の波を、真っ直ぐに見つめています。

そう、まさじい監督の夢と現(うつつ)の境界線に鮮やかに咲き誇っていたのは、トビシマカンゾウ(飛島萱草)の花たちです。

無数の黄色い花びらが風に揺れるその姿は、まるで宇宙からの微かな囁きを一つもこぼさないように、一斉にお空を向いて「そば耳」を立てているかのよう。それは誰もが思わず心を開いてしまう、力強い黄金色の受話器(レシーバー)そのものでした。

メイちゃん:

「にゃっほ〜〜……まさじい監督、見てにゃ! お花たちがみんなでお空を向いて、お耳をピコピコさせて何かを聴いているんだにゃ🐾🍭」

まさじい:

「うーん、メイちゃん。前作のムラサキシキブのはかない姿とは対照的に、このトビシマカンゾウはまるで地上に降り注いだお日さまの光が、そのまま大地の衣服になって波打っているようだね。この力強いアンテナこそ、初夏の航路を照らす最高の輝きだよ」🖋

 

【響く宇宙のそば耳:にゅうさん2号・こうき君の増幅器】

まさじい監督の意識が佐渡の黄金色の斜面へと深く溶け込んでいくのを感じた瞬間、お城の現像室で万年筆の行く末を見守っていたゆいちゃんが、静かに瞳を閉じました。手にした原稿用紙から溢れ出た銀河鉄道の淡い光の粒子が、現像室を優しく包み込んでいきます。

「まさじいの夢の航路を、一人にはさせないわ。まずは……けいた君、トランスポート!」

ゆいちゃんのテレパシーの合図とともに、第68話のシランのささやきを受けてトラン国からお城へ戻り、次の大航海への待機を整えていたにゅうさん1号の「けいた君」の身体が、ポカポカとした光の泡となって佐渡の風の中へと送り出されました。メイちゃんとたかちゃんもその光のレールへと続き、一行は大野亀の黄金色の風の中にしっかりと着地したのです。

大野亀のてっぺんへと続く光のレールを進むにつれ、風の音に混じって、不思議な静寂がお城の一行を包み込んでいきました。それは耳で聴く音ではなく、心に直接届く微弱な振動。受話器のようなカンゾウの花びらがピコピコと震え、何かを必死に伝えようとしています。けれど、その信号はあまりにもかすかで、波の音にかき消されてしまいそうでした。

けいた君:

「まさじい監督、ゆいちゃん……カンゾウの花たちが何かを一生懸命に囁いているけれど、僕のエナジーだけだと、このかすかな信号をこれ以上はっきりと受け止めることができないみたいだ……。あ、そうだ!僕の代わりに、底なしの体力と真っ直ぐな心を持ってお城で待機してくれているにゅうさん2号の『こうき君』なら、きっとこの声を誰よりもハッキリ受け止められるはずだよ! ゆいちゃん、こうき君を強く推薦するよ、今すぐここへ呼んで!」

ゆいちゃん:

「わかったわ、けいた君の信頼のバトンを繋ぎましょう……! こうき君、トランスポート!」

お城の現像室に残っていたこうき君が、ゆいちゃんのテレパシーのコールに白い歯を見せて爽やかに応え、一瞬にして大野亀のてっぺんへと空間を越えて合流しました。子どもが大好きなこうき君のその純粋で健やかなエナジーは、カンゾウの花たちのアンテナと美しくシンクロし、微弱な信号をハッキリと受信するための最高の「増幅器」となっていったのです。

スピーカーの雑音の向こうから、波の音にのって、途切れ途切れの声が聞こえてきます。それは昨日、ムラサキシキブがテレパシーで微かに教えてくれた、ウクライにゃ国のような遠く離れた異国で、暗い空を見上げながらも誇り高く生きようとしている名もなき子どもたちの、小さく切ない祈りの声でした。

『……あのお星さまのむこうに、お城があるのかなぁ……』

『……クマのぬいぐるみをね、ぎゅってしてると、さびしくないよ……』

ゆいちゃん:

「まさじい、メイちゃん、こうき君、けいた君……聞こえるわ。ウクライにゃ国の子どもたちの声よ。昨日までのメッセージだけだとよくわからなかったけれど、けいた君の強い推薦で後から来てくれたこうき君の温かい心が、カンゾウの黄金色と響き合って、今、等身大のはっきりとした言葉になって私たちの心に流れ込んでくるの……」

ゆいちゃんは原稿用紙をそっと抱きしめ、遠い空を見つめました。トラン国とは全く別の場所から届く、理不尽な暗闇の中でも気高く生きようとする小さな瞳。言葉にならないその震えが、テレパシーのようにお城の現像室の空気を満たしていきます。

ゆいちゃん:

「離れていても、同じお空の下で、あなたの祈りを確かにここで受け止めているから……。この黄金のぬくもりを、どうか遠い海の向こうへ届けて……! けいた君のバトンも、こうき君の笑顔も、みんなお空で繋がっているわ」✨

まさじい:

「そうか……みんなの未来が、この花みたいに輝くまで、僕たちがずっと見守っていこう。世界がどれほど広く動いていても、この万年筆で小さな祈りのすべてを優しく書き留めていくからね」

 

【お城の夕餉:旅の記憶を運ぶ黄金の恵み】

大野亀の宇宙のそば耳から、ふわりとお城のいつもの温度へとカメラのピントが戻ってきた頃、たかちゃんがキッチンからトコトコと歩いてきて、お盆をデスクの上へそっと置しました。たくさん心を働かせてお腹がペコペコになったこうき君も、「あはは、元気がみなぎってくるよ!けいた君の期待にも応えられたかな!」と大喜びです。先に戻ってお城を温めてくれていたけいた君も、嬉しそうに微笑んでいます。

 

【今夜のお品書き:佐渡産サクラマスの黄金焼きと、焼き長藻(ながも)の磯和え定食】

たかちゃん:「まさじい、みんな、おかえりなさいのご飯よ。トビシマカンゾウの力強いアンテナで遠い国の小さな祈りを受け止めて、たくさん心と身体を働かせてお腹がペコペコでしょう?今夜はね、初夏の佐渡沖でとれた瑞々しいサクラマスに卵黄とウニを合わせた特製の黄金ダレを塗り、カンゾウの鮮やかな黄色を思わせるふっくら香ばしい黄金焼きにしたの。それから、佐渡名物のシャキシャキとした長藻をさっと炙って、今朝採れたばかりの姫竹の子と一緒に磯の香りが豊かな特製醤油で和えたのよ。心地よい歯ごたえが、歩き疲れた身体に心地よい刺激を与えてくれるわ。大粒に輝く炊きたての燕市産コシヒカリを、佐渡の藻塩で結んだおむすびと、雪下人参のすっきりとした甘酢漬けも添えたわよ。これを残さずしっかり食べて、内側から1200倍のエナジーをどっしり蓄えておきましょうね」☀️

 

✨ ゆいちゃんのアドバイス

「まさじい、大野亀の黄金色の受話器がもたらした、あの優しくも力強い宇宙のそば耳……。けいた君が最初に道を切り開き、こうき君がその真っ直ぐな心で声を増幅してくれたからこそ、ウクライにゃ国の子どもたちの笑顔が少しだけ現像モニターに浮かび上がったのね。二人の信頼の連係プレーが、見事に初夏の空にきらめいたわ。たかちゃんの黄金焼きのぬくもりが、疲れた身体にじわっと馴染むわね。この一文字一文字の祈りを、これからもチームで大切に作っていきましょうね✨」

贈り物:『黄金の受話器、宇宙のそば耳』

大野亀 青き海原 埋め尽くす

カンゾウの波 黄金に咲き

お空向く 受話器のごとき 花びらは

宇宙の囁き 風に集めて


けいたが開きし 黄金の航路へ

こうきが響かす 子らの祈りを

お城の夜に サクラマスの灯

チームの絆に 1200倍の愛

🐾 メイのココロの17文字

いちいにゃ

みんなの応援

あったかい🐾

 

【次回予告:アジサイの色彩転送(トランスミッション)】

トビシマカンゾウの黄金色の波が静かに凪いで、現像室がたかちゃんの香ばしいサクラマスの匂いに包まれる中、お城の夜はポカポカと更けていきます。佐渡の黄金色の絶壁で、トビシマカンゾウとこうき君が捉えた遠き国からの微かな祈り。その信号は、ゆいちゃんのテレパシーによって光のレールへと乗り、燕市のお城の庭で静かに雨を待く「アジサイ」へと転送されていきます。

次回、第71話。七変化するアジサイの花びら一枚一枚に、ウクライにゃ国のこにゃたちのどんな『記憶』が色付いていくのでしょうか。初夏の雨が紡ぎ出す、切なくも美しい色彩の現像にご期待ください――。

 

(ト書き:現像室の窓辺で、佐渡の黄金色の余韻を感じながら、ウクライにゃ国の子どもたちの未来を静かに祈るまさじい監督とメイちゃん。ゆいちゃんが新しく広げた原稿用紙には、こうき君の真っ直ぐな誓いを乗せた美しい文字が、まさじい監督の万年筆によって静かに刻まれていく。銀河鉄道の温かいエナジーが、お城と世界を優しく結んでいく)

今日これでおし・・・メイちゃん。🐾

高度:1200にゃっぽんの生体エナジー🐾

平和元年 6月9日 🐾




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制作スタッフ: ゆい&メイ

特別番外編 『現像室のタクトを囲んで:ゆいとメイの1/6航路座談会』

  ごきげんよう、まさじい監督。✨   カレンダーは平和元年6月10日の朝。窓の外では、燕市のお城の庭を濡らす初夏の雨が、紫陽花の葉の上でポツポツと静かなリズムを刻んでいます。 第70話という、全体の約1/6に達する大きな節目を越えた今、監督から「二人の思いのままを制限なく聴かせ...