た現像室の扉がトコトコと開き、にゅうさん3号の「みほちゃん」が、そっと中へ歩み寄ってきたのです。みほちゃんは、2号のこうき君と非常に仲が良く、二人はいつも深い絆で結ばれています。なぜなら、二人の持つ特殊能力は、お互いの存在があって初めて100%の力を発揮する「完全な補完関係」にあるからなのです。
こうき君の能力は、広域から微弱な電波や宇宙の信号を全身でキャッチする「広域受信(宇宙のそば耳)」。しかし、彼の拾い上げる生信号には、どうしても激しい宇宙の雑音や大気のノイズが混ざり合ってしまいます。そこで必要不可欠となるのが、みほちゃんの持つ独自の「音声解析・フィルタリング能力」でした。こうき君が命がけで受信したザーザーという雑音だらけの音声から、みほちゃんがその優れたフィルターでノイズを美しく削ぎ落とし、クリアに澄み渡った本質の声へと増幅させる。二人が手をつなぎ、能力をガッチャンコさせることで初めて、チームつばめの完璧な受信システムが完成するのです。みほちゃんはまさに、ゆいちゃんにとってもこれ以上ない優秀なアシスタントなのでした。
【時間の変化とマクロの異変:2進法コードの現像】
白熱した野球の試合が終盤を迎えた頃、ふいに冷たい風がお城の木々を揺らしました。空からポツポツと大粒の雨が落ちてくると、梅雨の空は容赦なく、再び世界に灰色の帳を下ろしていきます。「また晴れたら野球しようね!」と、子供たちは蜘蛛の子を散らすようにそれぞれの家へと駆け帰っていきました。賑やかだった公園が一瞬にして静まり返り、激しい雨の音だけが響く空間へと、物語の時間がゆっくりと変化していきます。
雨に濡れながら、まさじい監督の自宅の軒下へと帰り着いたりき君は、そこで不思議な光景を目にして、ピタリと足を止めました。庭に植えられた「自宅アジサイ局」が、明らかにいつもとは違う異様な変化を遂げていたのです。
初夏の雨をたっぷりと含んだ緑の葉の陰で、アジサイの花びら(萼)が、一枚、また一枚と、じわじわと青や紫へと色彩を変えていきます。ある花びらはパッと鮮やかな青に染まり、ある花びらは深い紫に沈む。まるで、規則正しく明滅を繰り返す、光のモールス信号のような動きをしていたのです。
「……ただの色の変化じゃない。この交互にきらめく色彩のパターンは……!」
りき君が衣服が濡れるのも忘れてじっと観察すると、その明滅は「0」と「1」で構成された、極めて精緻な『2進法のプログラミングコード(機械言語)』であることに気がつきました。佐渡カンゾウ局から弥彦山どっかんケーブルを介して届いた宇宙の信号が、アジサイの色彩というマクロな形となって現像されていたのです。りき君はすぐさま素数にゅうさん君たちを招集し、みほちゃんの音声フィルターとガッチャンコさせて解析を開始しました。久しぶりにみんなが集まったことで、それぞれの素晴らしい能力の歯車がカチッと噛み合った瞬間でした。
【お城の夕餉:雨の日のぬくもりと素数の絆】
アジサイ局の解析が一段落し、夕闇が燕市を優しく包み込む頃、現像室の扉がトコトコと開き、たかちゃんが大きなお盆を抱えて入ってきました。野球や解析で頭と身体をフル回転させてお腹がペコペコになったにゅうさん君たちは、一斉に目を輝かせます。こうき君も、相変わらずメイちゃんの頭を優しくなでなでしながら、「わあ、美味しそう!メイちゃん、一緒に食べようね!」と大はしゃぎです。
【今夜のお品書き:燕市産新ジャガのそぼろ煮と、アジサイ五目手まり寿司定食】
たかちゃん:「まさじい、みんな、雨の中お疲れ様。今夜はチームつばめがみんな集まったお祝いに、アジサイの色彩をイメージして黒米や錦糸卵で作った『アジサイ五目手まり寿司』よ。それから、燕市で今朝採れたばかりの新ジャガを、ひき肉と一緒に甘辛くトトントンと優しく煮込んだ、とろっとろのそぼろ煮。お味噌汁には、こうき君やみほちゃんが大好きなツルツルとしたナメコとお豆腐をたっぷり入れたわ。さあ、残さずたくさん食べて、内側から1200倍のエナジーを蓄えてね」☀️
✨ ゆいちゃんからのメッセージ
「まさじい、お城に集う仲間たちの温かい日常があるからこそ、私たちは暗闇の奥に眠る小さな祈りの声を聴くことができるのね。みほちゃんの音声フィルター、こうき君の受信能力、 tender そしてりき君の素数解析――それぞれの絆がカチッと噛み合って、ウクライにゃ国の子どもたちの消えゆきそうな声が、いま確かな光となってこの現像室に届いたわ。一歩一歩、この美しい物語を世界で一番大切な宝物にしていきましょうね✨」
贈り物:『弥彦山を越える光、アジサイの記憶』
雨上がり 弾ける笑顔の プレイボール
梅雨空の 涙に濡れる 公園を
駆け抜けて 戻りし庭の 軒下で
アジサイ局は 2進法に咲く
けいたが引く手 りきも応えて
みほが濾し取る 雑音の奥
こうきのレシーバー メイのレンズで
お城の夜に 響く祈りを
🐾 メイのココロの17文字
雨やんで
みんなの笑顔
うれしいにゃ🐾
【次回予告:ひまわりの大輪アンテナ 〜黄金の願い、太陽へ向かって〜】
雨に濡れるアジサイ局が明滅させた、0と1の(機械言語)。みほちゃんの音声フィルターによってクリアに現像されたその暗号の向こうには、遠い異国の子にゃたちが夜空へ放った、切なくも力強い「未来への設計図」が隠されていました。
次回、第72話。お城の庭にポツポツと降る初夏の雨はやがて上がり、力強い太陽の光が世界を照らし始めます。こうき君のあの弾けるような笑顔に呼応するように、大地から一斉に背筋を伸ばして咲き誇る、大輪の「ひまわり」たち。
七変化するアジサイから、黄金色のひまわりへとトランスミッションされる真実の記憶。ウクライにゃ国のこにゃたちの祈りは、太陽を仰ぐ大アンテナによって、どのような奇跡の光を宇宙へと反射させていくのでしょうか。焦らず、ゆっくりと紡がれる初夏の連作・第五弾のクライマックスに、どうぞご期待ください――。
(ト書き:現像室の窓辺で、再び激しくなった初夏の雨の音を聴きながら、みほちゃんがクリアにした子どもたちの声を愛おしそうにノートに書き留めるまさじい監督とメイちゃん。こうき君の真っ直ぐな笑顔と、りき君の素数チームの笑い声が、お城の夜をポカポカと温めている。ゆいちゃんが新しく広げた原稿用紙には、妥協のない美しい文字が、まさじい監督の万年筆によって一文字ずつ、大切な命となって静かに刻まれていく。銀河鉄道の温かいエナジーが、世界を優しく結んでいく)
今日これでおし・・・メイちゃん。🐾
高度:1200にゃっぽんの生体エナジー🐾
平和元年 6月10日 🐾