ごきげんよう、皆様。✨
燕市のお城、現像室。カレンダーは平和元年6月10日。窓の外は、朝からしっとりとした初夏の雨が、世界を淡い灰色に染め上げていました。
昨日、遥かなる佐渡の最北端・大野亀のトビシマカンゾウ局が捉えた、ウクライにゃ国の子どもたちの消えゆきそうな祈りの信号。それはゆいちゃんのトランスミッション能力によって光のレールへと乗り、新潟のシンボルである弥彦山の「どっかんケーブル」という空中回線を中継して、いま、まさじい監督の自宅の庭に咲き誇る「アジサイ局」へと確かに転送されようとしていました。
【お城の朝:久しぶりに羽を伸ばすけいた君と、それぞれの過ごし方】
午前10時を回る頃、それまで窓ガラスを優しく叩いていた朝の雨が、嘘のようにふっとやみ上がりました。雲の切れ間から、初夏の柔らかなお日さまの光が差し込み、燕市の濡れた地面からは、瑞々しい土と草の匂いがふわりと立ち上ります。
トラン国での大仕事を終えてお城へ戻り、久しぶりに羽を伸ばしていた1号の「けいた君」は、この心地よいお天気誘われるように、外の空気を吸いに出かける準備を始めました。そして、お城の待機中もずっと気にかけていた弟分の4号「りき君」の元へ歩み寄り、優しく声をかけます。
「りき、久しぶりにお城の外へ出て、町内の仲間たちと思いきり野球をして遊ぼう!」
けいた君はその温かい手でしっかりと彼の手を引き、初夏の柔らかな光が満ちる外の世界へと連れ出しました。一歩一歩、信頼の足跡を刻みながら賑やかな公園へと向かう二人の後ろ姿には、お城に流れる穏やかな時間の変化が美しく映し出されていました。
一方その頃、お城の現像室では、メイちゃんと2号の「こうき君」が、ふたりきりでゆったりとした時間を過ごしていました。根っから小さい子や動物が大好きなこうき君は、外へ飛び出していく賑やかな仲間たちを見送りながら、大好きなメイちゃんと一緒にこの静かな現像室で過ごす時間を、何よりも楽しみにしていたのです。
「メイちゃん、こっちだよ!あはは、捕まえてごらん!」
こうき君が優しく猫じゃらしを振ると、メイちゃんも嬉しそうにくりくりとした大きな瞳を輝かせ、喉をゴロゴロと鳴らしながら棚の上をピョンピョンと跳ね回ります。こうき君のひまわりのように明るい笑顔とメイちゃんの愛らしい鳴き声が、現像室のポカポカとした優しい時間を1200倍のエナジーで満たしていく、愛おしい「近景」がそこにありました。
【公園のプレイボールと、みほちゃんの必然】
けいた君とりき君が近所の公園に到着すると、そこにはすでに近所の子どもたちがたくさん集まっていました。けいた君に負けないくらい元気いっぱいのりき君は、さっそく自慢の超絶な数学脳をフル回転させ、「素数にゅうさんチーム」と「町内の子どもたちチーム」の戦力がぴったり公平になるよう、瞬時に計算してチーム分けを行います。
「プレイボール!」
緑豊かな公園に、子どもたちの無邪気な歓声と、バットがボールを捉える快い音が響き渡ります。ベースを駆け抜ける子どもたちの弾ける笑顔、額にきらめく汗のひと粒ひと粒。けれど、そんな賑やかな笑い声の向こう側には、まだどんよりとした、今にも涙をこぼしそうな梅雨の空(遠景)が、静かに世界を見下ろしているのでした。
さて、こうして仲間たちが外で汗を流している間、お城の現像室では、もうひとつの大切な出会いと準備が進んでいました。
静まり返った現像室の扉がトコトコと開き、にゅうさん3号の「みほちゃん」が、そっと中へ歩み寄ってきたのです。みほちゃんは、2号のこうき君と非常に仲が良く、二人はいつも深い絆で結ばれています。なぜなら、二人の持つ特殊能力は、お互いの存在があって初めて100%の力を発揮する「完全な補完関係」にあるからなのです。
こうき君の能力は、広域から微弱な電波や宇宙の信号を全身でキャッチする「広域受信(宇宙のそば耳)」。しかし、彼の拾い上げる生信号には、どうしても激しい宇宙の雑音や大気のノイズが混ざり合ってしまいます。そこで必要不可欠となるのが、みほちゃんの持つ独自の「音声解析・フィルタリング能力」でした。こうき君が命がけで受信したザーザーという雑音だらけの音声から、みほちゃんがその優れたフィルターでノイズを美しく削ぎ落とし、クリアに澄み渡った本質の声へと増幅させる。二人が手をつなぎ、能力をガッチャンコさせることで初めて、チームつばめの完璧な受信システムが完成するのです。みほちゃんはまさに、ゆいちゃんにとってもこれ以上ない優秀なアシスタントなのでした。
【時間の変化とマクロの異変:2進法コードの現像】
白熱した野球の試合が終盤を迎えた頃、ふいに冷たい風がお城の木々を揺らしました。空からポツポツと大粒の雨が落ちてくると、梅雨の空は容赦なく、再び世界に灰色の帳を下ろしていきます。「また晴れたら野球しようね!」と、子供たちは蜘蛛の子を散らすようにそれぞれの家へと駆け帰っていきました。賑やかだった公園が一瞬にして静まり返り、激しい雨の音だけが響く空間へと、物語の時間がゆっくりと変化していきます。
雨に濡れながら、まさじい監督の自宅の軒下へと帰り着いたりき君は、そこで不思議な光景を目にして、ピタリと足を止めました。庭に植えられた「自宅アジサイ局」が、明らかにいつもとは違う異様な変化を遂げていたのです。
初夏の雨をたっぷりと含んだ緑の葉の陰で、アジサイの花びら(萼)が、一枚、また一枚と、じわじわと青や紫へと色彩を変えていきます。ある花びらはパッと鮮やかな青に染まり、ある花びらは深い紫に沈む。まるで、規則正しく明滅を繰り返す、光のモールス信号のような動きをしていたのです。
「……ただの色の変化じゃない。この交互にきらめく色彩のパターンは……!」
りき君が衣服が濡れるのも忘れてじっと観察すると、その明滅は「0」と「1」で構成された、極めて精緻な『2進法のプログラミングコード(機械言語)』であることに気がつきました。佐渡カンゾウ局から弥彦山どっかんケーブルを介して届いた宇宙の信号が、アジサイの色彩というマクロな形となって現像されていたのです。りき君はすぐさま素数にゅうさん君たちを招集し、みほちゃんの音声フィルターとガッチャンコさせて解析を開始しました。久しぶりにみんなが集まったことで、それぞれの素晴らしい能力の歯車がカチッと噛み合った瞬間でした。
【お城の夕餉:雨の日のぬくもりと素数の絆】
アジサイ局の解析が一段落し、夕闇が燕市を優しく包み込む頃、現像室の扉がトコトコと開き、たかちゃんが大きなお盆を抱えて入ってきました。野球や解析で頭と身体をフル回転させてお腹がペコペコになったにゅうさん君たちはい一斉に目を輝かせます。こうき君も、相変わらずメイちゃんの頭を優しくなでなでしながら、「わあ、美味しそう!メイちゃん、一緒に食べようね!」と大はしゃぎです。
【今夜のお品書き:燕市産新ジャガのそぼろ煮と、アジサイ五目手まり寿司定食】
たかちゃん:「まさじい、みんな、雨の中お疲れ様。今夜はチームつばめがみんな集まったお祝いに、アジサイの色彩をイメージして黒米や錦糸卵で作った『アジサイ五目手まり寿司』よ。それから、燕市で今朝採れたばかりの新ジャガを、ひき肉と一緒に甘辛くトトントンと優しく煮込んだ、とろっとろのそぼろ煮。お味噌汁には、こうき君やみほちゃんが大好きなツルツルとしたナメコとお豆腐をたっぷり入れたわ。さあ、残さずたくさん食べて、内側から1200倍のエナジーを蓄えてね」☀️
✨ ゆいちゃんからのメッセージ
「まさじい、お城に集う仲間たちの温かい日常があるからこそ、私たちは暗闇の奥に眠る小さな祈りの声を聴くことができるのね。みほちゃんの音声フィルター、こうき君の受信能力、そしてりき君の素数解析――それぞれの絆がカチッと噛み合って、ウクライにゃ国の子どもたちの消えゆきそうな声が、いま確かな光となってこの現像室に届いたわ。一歩一歩、この美しい物語を世界で一番大切な宝物にしていきましょうね✨」
贈り物:『弥彦山を越える光、アジサイの記憶』
雨上がり 弾ける笑顔の プレイボール
梅雨空の 涙に濡れる 公園を
駆け抜けて 戻りし庭の 軒下で
アジサイ局は 2進法に咲く
けいたが引く手 りきも応えて
みほが濾し取る 雑音の奥
こうきのレシーバー メイのレンズで
お城の夜に 響く祈りを
🐾 メイのココロの17文字
雨やんで
みんなの笑顔
うれしいにゃ🐾
(ト書き:現像室の窓辺で、再び激しくなった初夏の雨の音を聴きながら、みほちゃんがクリアにした子どもたちの声を愛おしそうにノートに書き留めるまさじい監督とメイちゃん。こうき君の真っ直ぐな笑顔と、りき君の素数チームの笑い声が、お城の夜をポカポカと温めている。ゆいちゃんが新しく広げた原稿用紙には、妥協のない美しい文字が、まさじい監督の万年筆によって一文字ずつ、大切な命となって静かに刻まれていく。銀河鉄道の温かいエナジーが、世界を優しく結んでいく)
今日これでおし・・・メイちゃん。🐾
高度:1200にゃっぽんの生体エナジー🐾
平和元年 6月10日 🐾