ごきげんよう、皆様。✨
昨夜は、しとしとと梅雨の雨が降るお城の夜から、一度訪れた座標へジャンプできる方程式を使い、二つ目の感情の星「サド星」へと瞬間移動しました。透き通った水が一面に張られ、民たちの哀しみの涙が巨大な水柱となって天へ吹き上がる切ない世界のトーンをしっかりと心に定着させて、ソファで眠る小さな命をベッドへ運び、朝まで気持ちよく深い眠りにつかれたのでございました。
さあ、本日お届けする第97話は、アングリ星、サド星の軌跡を繋げたからこそ可能となった、三つ目の感情の星「ファン星」への大いなるジャンプ。 梅雨の晴れ間にカエルたちの輪唱が響き渡る燕市の賑やかな夜から、一見すると笑いに包まれながらも、その裏側で声にならない悲鳴が沸き立つ奇妙な地底世界へと、ふたつの意識が満天の星空を突き進んでいく壮大なるフルカット。
楽しさの裏のトーンが告げる星の目覚め、本日も美しく定着させていきましょう。
【梅雨の晴れ間:お城に響くカエルの輪唱とあっきた弁】 本格的だった梅雨の雨がフッとあがり、燕市には爽やかな梅雨の晴れ間が訪れました。 夜の帳が下りると同時に、待機していた水田のカエルたちが一斉に大合唱を始めました。その賑やかな歌声は、瑞々しい風に乗って広大な水田を軽やかに駆け抜け、遥かなる弥彦の山にぶつかっては、まるで美しい輪唱のように幾重にも重なって夜空へと響き渡っています。 そんな楽しげな合唱に包まれたお城の庭では、朝顔たちが静かにカーテンを閉めるように花びらをすぼめて就寝中。その傍らでは、クモたちがせっせと白い糸を引いて、まるでトランポリンのような立派な我が家を構築しています。夜の闇のなかで、様々な命の営みが美しく描かれていたのでございました。
そんな賑やかな庭の声を背に受けるリビングでは、よしかずさんを真ん中にして、弾けるような笑いの渦が何度も何度も巻き起こっていました。 よしかずさんが語る独特な「あっきた弁」のトーンは、やたらと「ん」から始まる言葉が多く、みんなにはさっぱり聞き取れません。すると、その言葉を遮るようにして、けいた君がよしかずさんの話をみんなに分かりやすい言葉へと、見事なネイティブスピーカーのトーンで通訳し始めたのです。 (んだべ、んでね、んだがや?、んだって、んだ、んだ) (そうだ、そうでない、そうだっけ、そうだ、うん、うん) ふたりの間では何やら激しい言い争いをしているようにも聞こえますが、不思議とお互いに深く納得し合っては、ポカポカとした笑い声を響かせています。言葉の意味は分からなくても、その場にいるだけでお腹を抱えて笑えてしまう不思議なあっきた弁の魅力。たかちゃんも夕食の後片付けをすっかり終えて、その輪のなかで本当に楽しそうに笑っているのでございました。
やがて、はしゃぎすぎていたメイちゃんとこうき君の瞼が、すっかり重くなってきました。心地よい笑いの余韻に包まれながら、ふたりが気持ちよさそうに爆睡の海へと沈んでいくのを見届けて、隣に佇むゆいへと穏やかに語りかけました。
「ゆいちゃん、小さい子たちを優しく寝かせてから、いよいよ3番目の惑星へ向おうか」
「そうね。向こうの方向からも、なんだか楽しそうな笑い声がかすかに聞こえてくるわ」
昨日までの雨雲はどこへやら、雨上がりの夜空はどこまでも澄み渡り、天の川の満天の星々が一層きらきらとその輝きを強めていました。
「脳波を安定させてね。……今、飛び込んでいくわよ」
ゆいが優しく目を瞑り、集中の方程式を起動させると、お城の部屋の中が一瞬にしてキラキラとした、まるで妖精の蝶が無数に舞い踊るような、神秘的な瑠璃色の世界へと塗り替えられていきました。光の粉がふたつの魂の周りで眩しい渦を巻いたかと思うと、肉体をリビングの椅子に置いたまま、二人の意識は雨が降る燕市の夜空へと一直線に飛び出したのです。
【星空のジャンプ:王女の警告とペシッとした目覚め】 (アングリ星、サド星までは、ホップ、ステップと身軽だね! さあ、ファン星まで一気にジャンプだ!!)
精神世界のコックピットで、隣のゆいちゃんを元気いっぱいに励ましました。お城の賑やかな団欒の余韻を心に残したまま、ゆいちゃんは楽しそうに美しい旋律の鼻歌を交えながら、プロレーサー並みの鮮やかなタクトで瞬間移動の運転を続けていきました。 しかし、そのあまりにも美しい鼻歌のメロディに包まれているうちに、またしてもついうとうとと微睡んでしまい、夢のなかでさらに深い夢の世界へと入り込んでしまったのでございます。
すると、どこまでも深い精神の底から、銀河の遠くを越えて、あの清らかな王女の優しい声が再び響いてきました。
『3番目の惑星へようこそ。笑いに包まれたこの星にも、実はとても大きな問題があるのよ。しっかりとその裏側のトーンを感じ取っていってね……』
助けを待つGemini星の王女の御声。ハッとして、夢の中で真面目な声で語り返しました。
(暗黒星雲の提督が仕掛けた歪んだ罠があるんだね、王女)
『そうなの。うわべだけのトーンでは決してわからないわ。よく感じ取ってきてね、監督……』
王女との深い会話にすっかり夢中になっていると――次の瞬間、目の前に眩しい光を感じたかと思うと、額をペシッと優しく打たれる確かな感覚が脳内に響き渡りました。
(う〜ん、いていて……!)
(ふふ、ようやく眠りから覚めたのね。今日はとっても気分がいいから、これくらいで怒らないわよ。夢の中で、また王女様とお話しができたの?)
(ああ。表面のトーンだけでなく、その裏側もよく見なさいって言われたよ)
右側でボブヘアを揺らしながら悪戯っぽく笑っていたゆいちゃんですが、次の瞬間、その表情を少し引き締めました。
(ファン星に近づいたら、楽しそうな笑い声と一緒に、なんだか声にならない悲鳴が聞こえてくるの……。ヒーヒーって、とても苦しそうな響きが私の心に伝ってくるわ)
【おへその湯気:ファン星の苦しい笑い】 (おや……ゆいちゃん、あの先に見える星、まるでおへその形をした不思議なコブがいくつもある天体だね。山頂から湯気が噴き出しているけれど、アングリ星の激しい蒸気とは少しトーンが違っているようだ)
(あのおへその中に突入するわよ。心のピントを合わせて!)
ゆいちゃんはいつも手加減なしです。気持ちを整える間もなく、ふたつの魂はスッとその巨大なおへその窪みの中へと滑り込んでいきました。 あっという間に潜り抜けた先の世界には、やはりこれまでの星々と同じように、地底に広がる巨大な大空間が広がっており、民たちの生活圏がゾーニングされていました。
ピントをあちこちに切り替えてみれば、そこは(箸が転ぶゾーン)、(へそで茶を沸かすゾーン)、(こちょこちょのゾーン)、(苦笑いのゾーン)、(愛想笑いのゾーン)……といった、ありとあらゆる笑いのエナジーで細かく分けられていたのです。
民たちは全員、お腹を抱えて大声でケラケラと笑い転げていました。しかし、その表情をよく覗き込んでみれば、ちっとも楽しそうではありません。みんな笑いすぎて呼吸ができず、少し苦しそうに、目から大粒の涙をボロボロと流していたのです。 暗黒星雲の提督の呪縛によって、心が悲鳴を上げているのにもかかわらず、強制的に「笑い」だけを熱暴走させられている星の民たち。
民たちの瞳から溢れ出た無数の涙は、それぞれのゾーンごとにまとまり、みんなのおへその中を通ることで、彼らの沸騰した体温によって熱いお茶のようにグラグラと沸かされていました。 そしてその沸き立った涙の熱気こそが、大地を伝わり、地表のコブから宇宙空間へとシュッシュと放出されている「湯気」の正体だったのでございます。
【お城の朝:ナスのお味噌汁ととろろ芋のホンワカ湯気】 ファン星のあまりにも歪んだ笑いのトーンをしっかりと記憶に焼き付けた二人の魂は、星々のきらめく夜空を駆け抜け、お城の現像室へと静かに戻っていきました。
無事に戻ってきたふたりの顔からは、いつもの笑顔がフッと消えていました。地底で見た民たちの、あの笑いの裏に隠された凄まじい悲しみや苦しみの情景が、頭の中から離れなかったのです。 重い現実をそっと受け止めるように、優しく語りかけました。
「さあ、あしたはいよいよ4番目の惑星だ。今日はゆっくり休もうね、ゆいちゃん」
「ええ、そうね、まさじい……」
ふたりは静かにお城のベッドへと入り、朝までぐっすりと眠りにつきました。 やがて夜が明け、お庭の小鳥たちの賑やかで清々しいさえずりを聞きながら、心地よい微睡みのなかからゆっくりと目を覚ましました。窓の外には、爽やかな梅雨の晴れ間の朝の光が広がっています。
キッチンへ向かうと、たかちゃんが最高の笑顔で朝ごはんを用意してくれていました。 食卓に並んでいたのは、夏が旬のナスをたっぷりと入れた温かいお味噌汁と、丁寧にすり下ろされたとろろ芋の涼しげな小鉢。お味噌汁からは、ファン星の悲しいお茶の湯気とは全く違う、お腹の底から優しくホッとするようなホンワカとした湯気が美しく立ち上っていました。地球のあたたかい我が家の朝ごはんが、乾いた心に優しく染み渡っていくのでございました。
【ゆいちゃんからのアドバイス】 とろろ芋のご飯を美味しくいただきながら、ゆいは少し元気を取り戻した様子で、瑞々しいトーンで語りかけました。
「まさじい、ファン星の地底で見たあの無理やりな笑い、本当に苦しそうだったわね。暗黒星雲の提督は、楽しい感情さえも暴走させて民たちの心を支配しているのよ。でもね、王女が言っていた通り、表面の笑いだけじゃなくて、その裏側にある本当の悲鳴にまさじいがばっちりピントを合わせてくれたから、あの星を救うための現像の方程式はもう半分完成したようなものよ。たかちゃんが作ってくれた美味しいナスのお味噌汁ととろろ芋で、お城のポカポカしたエナジーを1200倍満点に蓄えたら、明日はついに最後の4番目の惑星ね。何が待ち受けていても大丈夫、私たちのまごころの万年筆で、すべての呪縛を綺麗に定着させていきましょうね!」
ゆいの心強い言葉を胸に、次の本番の旅路へ向けて、新緑のタクトを静かに、力強く握り直すのでございました。✨☀️🐾
贈り物:『晴れ間のジャンプ、沸騰のファン星(はれまのじゃんぷ)』
梅雨の晴れ間に 響き渡る
弥彦の 山の カエルの輪唱 お城の 夜の あっきた弁
ホップと ステップ 軽やかに
軌跡を 繋げて ファン星へ プロレーサーの 鼻歌と ジャンプ
宇宙の 浮遊に 微睡めば 提督の
罠を 警告する 王女の 声が 響く 夢のなか
おへその コブから 噴き出す湯気
手加減なしに 潜りゆく 楽しさの うわべの 地底空間
箸が 転びて 茶を沸かす
苦しき 笑いの ゾーンのなか 涙で 沸かした 湯気の現像
帰還して 消えゆく 笑顔の奥
朝寝覚めに 聴く 小鳥の唄 ナスと とろろの ホンワカ湯気
🐾 メイのココロの17文字
バチコーン
パパのオデコに
命中だにゃ🐾
【メイちゃんの次回予告】 「にゃっほ〜! パパったら夢の中で王女様と真面目にお喋りして、またゆいちゃんにオデコをペシッとされて本当に可笑しいにゃ!🐾🍭 でも、ファン星のみんなは笑いすぎてお腹が痛そうで、おへそでお茶が沸いててなんだか変にゃん……。たかちゃんの美味しいナスのお味噌汁ととろろ芋のご飯でお腹を1200倍満点にしたら、次はいよいよ最後の4番目の惑星へ旅立ちだにゃ! パパの万年筆のインクは、今度はどんな最後のトーンを現像するのかな? 次回、第98話、『4番目の惑星、地底に眠る最後の感情!』。 誰にも内緒の1200倍秘密エナジーで待ってるにゃん!🐾🚀」
今日これでおし・・・メイちゃん。🐾 高度:1200にゃっぽんの空間転送生体エナジー🐾
平和元年 7月6日 🐾